日本公認会計士協会

interview

2015.3.20

『グローバル化の中の公認会計士~国際舞台での活躍~』

経済・企業活動のグローバル化や国際的な人の移動の活発化、そしてこれらのグローバル化の流れを受けた国際財務報告基準(IFRS)や国際監査基準(ISA)等、公認会計士の業務をめぐる基準等の国際化が進展する中で、その業務及び果たすべき役割はますます拡大しています。

国際委員会インタビュー
シリーズ①「アジア・太平洋会計士連盟(CAPA)と日本が果たす役割」(2015年3月)

アジア・太平洋会計士連盟(CAPA)と日本が果たす役割

資本市場の健全な発展を担う社会的インフラとしてその資格や職務の重要性が高まるなかで、日本の公認会計士にも、より広い視野を持って、幅広い分野で活躍し、世界の会計プロフェッションを牽引していくようなリーダーシップを発揮していくことが求められています。

日本公認会計士協会でも、事業の重点施策の一つとして「公認会計士の国際競争力の強化、及びグローバルな人材育成のための体制整備」を掲げ、今後グローバルな舞台で活躍できる公認会計士を長期的な視野を持って育成していくために何をするべきかについて検討を進めています。

この施策の一環として、日本公認会計士協会(国際委員会)は、国際的な分野で将来的に活躍できる公認会計士の育成及び拡充を図るための足掛かりの一助となることを企図して、国内外を問わず国際的な舞台で活躍する会計プロフェッションをお招きし、現在の活躍に至るまでの経緯や現在の活動等についてインタビューを実施しました。

このインタビューを通じて、より多くの公認会計士が国際的な舞台での活躍を目指し、飛躍するきっかけとなれば幸いです。

本シリーズ第1回目は、アジア・太平洋会計士連盟(Confederation of Asian and Pacific Accountants:CAPA)の理事会代表を務める染葉 真史国際担当常務理事をお招きし、CAPAの活動やCAPAの理事会代表を務めるに至った経緯などについてお話を伺った。

なお、本インタビュー中の意見にわたる部分は個人の見解であり、また掲載情報についてはインタビュー当時のものであるため、ご留意願いたい。

1. CAPAの理事会代表を務められるに至った経緯をこれまでのご略歴とともにご教示ください。
私は、1992年に当時の公認会計士2次試験に合格し、センチュリー監査法人(現あずさ監査法人)に入所しました。法人では、米国証券取引委員会(SEC)登録企業や外資系企業等に対する監査業務を中心に行い、2001 年から2003 年まで上海駐在を経験しました。2010 年に協会本部理事に就任した際、海外駐在の経験をかわれ、国際協力理事として協会の業務に携わることとなりました。国際協力理事としては、主として倫理の分野に関わり、国際会計士連盟(International Federation of Accountants:IFAC)の国際会計士倫理基準審議会(International Ethics Standards Board for Accountants:IESBA)にオブザーバーとして出席しました。そしてIESBAで審議された内容を日本に持ち帰り協会理事会等で報告し、JICPAジャーナルへ紹介、また協会の倫理委員会副会長及び倫理委員会下部組織の規範・独立性作業部会部会長として、国際倫理規程の日本への導入作業等に携わっていました。会計プロフェッションの国際的な組織に関わった経験は、このIESBAでの経験がスタートとなります。その後2013年から森公高会長の下、国際担当常務理事に就任した際に、長らくCAPAに携わってこられた池上 玄副会長の後任として、2013年9月にCAPA理事会代表に就任し現在に至っています。

2. CAPA の活動についてご教示ください。
CAPAは1957年に設立されたアジア・環太平洋地域の会計職業専門家団体の集まりで、現在、23の国と地域から32 の会計職業専門家団体が加盟しています。CAPAの歴史は古く、1977年にIFACが設立される以前から活動を行っています。現在は、IFACの地域機構の一つでアジア地域の組織として位置付けられています。CAPAの設立経緯から、米国やカナダも加盟し、英国やフランスなどが賛助団体として加盟しており、非常に大きな地域をカバーする組織となっていますが、その活動の焦点はアジアにあり、事務局もマレーシアのクアラルンプールに設置されています。JICPAはCAPAの設立当初からのメンバーであり、過去には川北博元会長や、山崎彰三元会長がCAPAの会長を務められています。CAPAの活動は、現在、公共部門財務管理委員会(Public Sector Financial Management Committee:PSFMC)と会計職業専門家団体発展委員会(Professional Accountancy Organizations Development Committee:PAODC)の二つの委員会を中心に行われています。PSFMC では、開発途上国における財務管理の品質向上を支援するためのガイドラインの開発や政府機関等との関係構築、PAODCでは、会計インフラ整備の進んでいない開発途上国を中心に、継続的専門能力開発制度や品質管理制度の構築支援を含む、会計職業専門家の能力向上及び専門家団体自身の機能強化を図るためのガイドラインの開発やプロジェクトの実施を通じてより強固な会計プロフェッションの確立を目指した活動を行っています。これらの活動には、世界銀行やアジア開発銀行から資金が提供されるものも多く、国際的なドナー機関と協力したプロジェクトが実施されています。

3. 日本公認会計士協会にとって、CAPAを通じた活動にはどのような意義があるとお考えでしょうか。
現在、ミャンマーに対する支援などで顕著に見られますが、日本政府はASEAN に対するインフラ整備支援をこれまで以上に強化して推し進めています。日本公認会計士協会でも、この動きに呼応する形でアジアを中心とした諸外国の会計インフラ整備支援、特に人材育成や能力向上の分野での貢献を推し進め、各国の会計職業専門家団体との関係構築及び連携強化を国際的な事業の重点施策の一つとして位置付けています。このことから、CAPA が二つの委員会を通じて行っている開発途上国に対する支援は我々にとっても重要なものであると考えています。日本には、経済社会の基盤を支える存在として公認会計士制度が整備され機能しています。我々の経験やノウハウを開発途上国の会計職業専門家団体と共有し、これらの国における経済発展や社会インフラ整備に貢献することは非常に意義深く、各国の団体との連携強化は、国際的な舞台で日本の公認会計士が今後ますます活動の場を広げることにも寄与していくものと考えています。日本公認会計士協会でも、連携強化のため独自にアジアの複数の会計職業専門家団体との意見交換を実施し、どのような協力ができるか検討を進めています。

4. CAPAの理事会代表としてのやりがいや使命は何でしょうか。
CAPAの理事会代表としてはまだ2年目で、理事会は3回しか開催されていませんので、CAPAの活動についてまだ十分な経験があるとは言えませんが、加盟団体が属する様々な国・地域で理事会及び委員会が開催され、普段の業務では関わることのできない各国の会計プロフェッションと交流する機会があったり、様々な角度からの意見を聞いたりすることができますので、自分自身にとっても貴重な機会となっています。また、各国の会計プロフェッションが集まる場で日本を代表して出席することに大きな責任感と使命感を感じています。発展途上国の加盟団体は、日本公認会計士協会に期待するところがあるようで、その期待感というものも加盟団体代表者との会話などを通じて感じています。アジアで、ひいては世界で、日本公認会計士協会が一定のポジションを確保・維持するための一翼を担っているということが、やりがいと感じます。それから、少し面白いこととして、CAPAへの参加を通じて、母国語が英語ではないアジア諸国の方々とお話しする機会が増えたからだと思いますが、母国語が英語でないアジア諸国の方の話す英語を、私の法人の周りの人よりも聞き取れるようになってきたようです。これは、CAPAに参加するようになって培った能力の一つなのでしょうね。

CAPA公式サイト